今回ご紹介するは『大長編ドラえもん VOL.13【のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)】』
・この記事を読むとわかること
『のび太とブリキの迷宮』は、冒険よりも未来社会の設計思想に重点を置いた大長編である。
本記事では、ドラえもんが早々に離脱する構造、完全自動化社会チャモチャ星の描写を通して、本作が描いた「人間が楽をし続けた先の結末」を思想的に読み解いていく。
『大長編ドラえもん VOL.13【のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)】』ってどんな漫画?
『のび太とブリキの迷宮』は、一見すると夢のようなリゾート地と不思議な迷宮を舞台にした冒険譚である。
しかし物語の核心にあるのは、冒険そのものではなく、「便利さを極限まで推し進めた社会が、人間から何を奪うのか」という問いである。
本作は、大長編後期に顕著になる「脱・ドラえもん」の流れの中に位置づけられる作品でもある。
万能のひみつ道具による解決ではなく、人間自身が作り出した文明の帰結と向き合う構造が、物語全体を支配している。
明るく楽しい外見とは裏腹に、読後には強い不安と違和感を残す、シリーズ屈指のSF色の濃い一作である。
作品情報
| 作品名 | 大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】 |
| 作者 | 藤子・F・不二雄 |
| 巻数 | 全1巻 |
| ジャンル | SF/旅行/トランク/武田鉄矢 |
| 掲載誌 | 月刊コロコロコミック(1992年9月号から1993年3月号) |
| アニメ映画 | 1993年3月6日 |
| 関連作品 | 映画 新・のび太の日本誕生(リメイク作品/2016年3月5日) |
『ブリキの迷宮』が描く、便利さの果てに人間が失うもの
ドラえもん不在が生む、初めての“救出型”大長編
本作は『のび太のドラビアンナイト』や『のび太と雲の王国』に続く、「脱・ドラえもん」路線の完成形とも言える構造を持つ。
特筆すべきは、序盤でドラえもんが物語から離脱する点である。
これはシリーズ初の本格的な展開であり、「ドラえもんがいない状態で物語が進行する」という緊張感を意図的に作り出している。
しかも今回は、単なる不在ではなく、「さらわれたドラえもんを助けに行く」という明確な目的が設定されている。
残されたのび太たちが、自分たちの判断と行動でドラえもんを救いに行く構図は、これまでの大長編にはなかったものだ。
さらに、のび太・しずか組と、ジャイアン・スネ夫組にパーティーが分かれる展開も本作が初であり、物語に戦略性と役割分担という新しい緊張を生んでいる。
ここでは、ひみつ道具は補助にすぎない。
中心にあるのは「仲間を助けるために動く意思」である。
この構造自体が、後述する文明批評と強く呼応している。
チャモチャ星という“理想郷”の破綻
人間が楽を選び続けた結果、何が起きるのか
本作のテーマは、人間の科学技術が進化した先にある「明るい未来」と「暗い未来」の同時提示である。
その象徴がチャモチャ星だ。
チャモチャ星の人々は、とにかく遊ぶことが好きで、楽しいことだけをして生きている。
労働は一切不要であり、あらゆる仕事はロボットが担っている。
農場、工場、交通、役所、商店、警察、軍隊。
社会を構成するすべての機能がロボットに委ねられ、さらに「ロボットを作るのが面倒だから、ロボットを作るロボットを作る」という段階にまで至っている。
最終的に生まれたのが「イメコン」、イメージ・コントロールである。
人間は心に思うだけで指令を出せるようになり、指一本動かす必要すらなくなった。
しかし藤子・F・不二雄先生は、この社会を理想郷として描かない。
人間の身体は、使わなければ確実に衰える。考えなければ思考は鈍る。
チャモチャ星の人々は、便利さの代償として、自立する力を失っている。
この描写は、作者の先見性を強く感じさせる。
音声操作、全自動化、最適化が進む現代社会は、すでにチャモチャ星の入口に立っている。
なお、本作は『のび太と鉄人兵団』と同じくロボットが中心に据えられているが、決定的に異なる点がある。
鉄人兵団が「支配するためのロボット」であるのに対し、ブリキの迷宮のロボットは、あくまで「人間が楽をするために作った存在」である。
反乱は目的ではなく、結果にすぎない。
この違いが、本作をより現実的で恐ろしいSFにしている。
「遊びが仕事になる未来」は本当に幸福か
チャモチャ星と現代論の危うい共鳴
堀江貴文さんは、自身の著作で「働く時間が減り、遊ぶ時間が増え、その遊びが新しい仕事になる」と述べている。
この考え方自体は、決して否定されるものではなく、実際に本作が発表された当時には無かった職業が現代にはある。
代表的なのはユーチューバーだろうか。
しかし『ブリキの迷宮』は、その未来像に対して静かな疑問を投げかける。
チャモチャ星の人々は、確かに働かない。だが彼らは「創造」もしていない。
遊びは与えられ、快楽は管理され、自分で考え、試し、失敗する余地がない。
遊びと創造は似ているようで、決定的に違う。
前者は消費であり、後者は主体的行為である。
藤子・F・不二雄先生が描いたのは、「遊び続ける未来」ではなく、「考えなくてよい未来」の恐怖だ。
チャモチャ星は理想郷ではない。
便利さに身を委ね続けた結果、人間が人間でなくなっていく過程を示す警告装置である。
『ブリキの迷宮』は、人類の未来を断定しない。
ただ、「このまま進んだら、こうなるかもしれない」という可能性を突きつける。
その距離感こそが、この作品を今なお不気味で現実的なSFにしている。
なお『のび太とブリキの迷宮』は、アニメ映画としても制作されている。
原作の思想を踏まえたうえで映像版を見ると、チャモチャ星の不気味さやロボット社会の異常性が、より直感的に理解できる。
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中の人のあとがき
漫画の旅人珍しく物語のスタートのきっかけが、父・のび助。
今回のテーマは人間の化学が進化していった場合の明るい未来と暗い未来。
『のび太のドラビアンナイト』『のび太と雲の王国』に続き、脱ドラえもん展開になる。
・人間の体は使わなければどんどん衰えていくのです。
・このままではロボットなしでは動けなくなってしまいます。
藤子・F・不二雄先生の先見の明には驚かされる。
現代社会も徐々にチャモチャ星の様になってきている。
代表的なのはAmazonのアレクサか。
『だめだ。肉じゃがが母さんの味にならないよぉぉ』
堀江貴文さんも自身の著書で似たようなことを書いている。
堀江さんは「働く時間が減る分遊ぶ時間が増える。そして遊びの時間こそ新しい仕事(お金を生み出すこと)になる」と言っている。
はたして人類の未来はどうなるのか。
チャモチャ星のようにはならないでほしい。
大長編の第十三作目です。
ミニドラが大長編に初登場した作品です。
この記事が『大長編ドラえもん VOL.13【のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)】』に興味を持つきっかけになれば幸いです。
作品に興味を持った方は、こちらから電子版を確認してみてください。







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