今日ご紹介する漫画は『WOMAN』
この記事では、漫画『WOMAN(ウーマン)』がなぜ多くの読者に静かな余韻を残すのかを、作品構造とテーマの観点から整理する。
短編集という形式の中で描かれる「女性の人生」は、どれも派手ではないが、選択の重みと取り返しのつかなさを強く感じさせる。本記事を読むことで、『WOMAN』が描こうとした人生観、人物関係の描き方、そしてこの作品が今なお読み継がれる理由が明確になる。
『WOMAN(ウーマン)』ってどんな漫画?
『WOMAN(ウーマン)』は、戸田誠二による短編集であり、「女性」と「人生」を主題に、年齢や立場の異なる女性たちの選択と迷いを描いた作品である。
収録作はいずれも派手な事件や劇的な展開を軸にしていない。
仕事、恋愛、家族、創作、老い、帰郷といった、ごく日常的な出来事の中で、人が何を選び、何を諦め、何を引き受けて生きていくのかが静かに描かれている。
特徴的なのは、登場人物の多くが「強い決断」を下していない点である。
彼女たちは理想的な答えを選ぶわけでも、完全に逃げ切るわけでもない。
迷いながら、傷を抱えながら、それでも前に進く。その姿が現実の人生と強く重なる。
また、本作は短編集でありながら、全体として一貫した空気を持つ。
街、人間関係、過去との距離感が緩やかにつながり、「これは誰の人生でもあり得る」という感覚を読者に与える。
『WOMAN』は、人生の正解を示す漫画ではない。だが、人生をどう受け止めるかについて、確かな視点を残す作品である。
作品情報
| 作品名 | WOMAN |
| 作者 | 戸田誠二 |
| 巻数 | 全1巻 |
| ジャンル | 短編集/日常/ファンタジー/人生/女性 |
| 掲載誌 | 『Hiミステリー』『まんが たかの宗美コレクション』『Nextcomicファースト』2004年から2009年に掲載 書き下ろし作品【向かい合う】を加えた新装版が2018年の9月に宙出版から発行 |
『WOMAN(ウーマン)』の魅力3点
魅力① 日常の中に潜む「人生の分岐点」を切り取る構成
『WOMAN』の最大の特徴は、人生の大事件ではなく、「その人にとっての分岐点」を物語の中心に据えている点にある。
登場する女性たちは、結婚や出産、仕事の成功といった分かりやすい節目だけでなく、「描き続けるかやめるか」「帰るか帰らないか」「誰かと生きるか一人で生きるか」といった、外からは見えにくい選択を迫られる。
これらの選択は、どれも劇的ではない。
だが、選んだ瞬間から少しずつ人生の形を変えていく。
戸田誠二先生は、その“選んだ後の静かな時間”を丹念に描く。
選択そのものよりも、選択を引き受けた後の感情、違和感、納得しきれなさが丁寧に積み重ねられていく構造である。
重要なのは、どの選択にも「正解」が用意されていない点だ。
読者は、登場人物の選択を肯定も否定もできないまま物語を読み進めることになる。
その曖昧さこそが現実の人生に近く、だからこそ読後に強い余韻を残す。
『WOMAN』は、人生の成功譚でも失敗譚でもない。
選んだ結果として残る感情そのものを描くことで、「生きるとは何か」という問いを読者に静かに投げかけている。
魅力② 人物同士の関係性を“説明しない”描写の強さ
本作における人間関係は、言葉で説明されることがほとんどない。
夫婦、恋人、親子、友人といった関係性は明示されるが、その距離感や温度は、会話の間、視線、沈黙によって表現される。
例えば、理解しているつもりで実はすれ違っている関係。
支え合っているようで、どこか一方に負担が偏っている関係。
『WOMAN』では、そうした関係性が「問題」として語られることは少ない。
だが、読者は違和感として確実に受け取る。
この描き方によって、人間関係は固定されたものではなく、常に変化し続けるものとして描かれる。
関係が壊れる瞬間ではなく、壊れ始めていることに気づけない時間こそが、最もリアルに描かれている。
また、登場人物同士が必ずしも分かり合わない点も重要である。
理解されないまま終わる関係、言葉にできない感情を抱えたまま距離ができる関係が、淡々と描かれる。
それでも物語は救いを失わない。
なぜなら、分かり合えなかった事実そのものが、人生の一部として肯定されているからである。
この距離感の描写こそが、『WOMAN』を単なる感動作ではなく、人生を描く作品にしている。
魅力③ 選択は「やり直せない」という前提で描かれる人生観
『WOMAN』に通底するテーマは、「人生は基本的に取り返しがつかない」という現実である。
過去に戻ることはできず、選ばなかった選択肢は永遠に失われる。その前提が、全ての物語に静かに流れている。
だが本作は、その現実を悲劇として誇張しない。
後悔は描かれるが、後悔に飲み込まれて終わることもない。
選択の結果として生じる不完全な人生を、登場人物たちは抱え込んだまま生きていく。
重要なのは、「正しく選べたか」ではなく、「選んだ人生をどう引き受けるか」である。
戸田誠二は、人生の価値を成功や幸福の量で測らない。
不完全でも、迷いが残っていても、それでも続いていく人生を肯定的に描く。
この姿勢があるからこそ、『WOMAN』は読者を追い詰めない。
「こう生きるべきだ」と押し付けるのではなく、「こういう生き方もある」と静かに示す。
人生の選択に正解がないことを前提にした上で、それでも生き続けること自体を肯定する構造が、本作の最大の強度である。
中の人の一言感想
【向かい合う】
駆け出しのイラストレーターとして活動する女性の物語である。
彼女は暗い絵を描く作風だが、その陰鬱な絵を描いている時間にこそ強い充実感を覚えていた。
祖母もまた絵を描く人で、こちらは対照的に明るい絵を得意としている。
祖母が絵を描き始めたきっかけは、若い頃に親友を亡くしたことだった。
原爆を題材に作品を描いていた画家の友人に勧められ、絵筆を取るようになったという。
祖母の明るく力強い絵と自分の絵を比べるたび、女性は自分の作品がつまらなく見え、気持ちが沈んでいく。
そんな折、出版社からシリアスな作風の小説家の挿絵コンペがあることを知らされる。
小説のテーマは重く、自分の絵の方向性と不思議なほど一致していた。
「これで自分の絵が試される」
そう思った矢先、祖母の画家仲間が亡くなる。
その後、祖母が描き始めたのは、原爆を題材にした連作だった。
かつて原爆の悲惨さを描き続けてきた友人の思いを、自分が引き継ごうとしたのかもしれない。
女性は祖母から戦時中の体験を聞き、初めて絵描きとして祖母に強い親近感を覚える。
しかし連作が終盤に差しかかったところで、祖母の筆は止まってしまう。
『もうつらくて描けん』
女性は、どんなに強く見える祖母であっても、向き合えないものがあるのだと知る。
やがて小説の挿絵は女性に決まり、仕事として絵を描く機会を得る。
まだ彼女は、絵が描けなくなるほどのつらさを知らない。
絵を描けなくなった祖母の背中を思い浮かべながら、女性は今日も絵を描き続ける。
漫画の旅人【Life】
街に暮らす猫と人々のお話。
同作者の『美咲ヶ丘ite(アイト)』っぽい世界観。


【ミーム】
売れない少女漫画家が、自分のファンの女子小学生としばらく同居するお話。
仕事に懸けてきた女性と早くに子供を産み育てた女性の対比。



どっちも出来る人もいるけれど、どちらか片方だけでも充分すごいと思う。
【サッフォーの末裔】
祖父や両親に受け入れられなかった女性小説家と同性愛者の女性のお話。



同性愛のカップルって出会いはどうなっているんだろう?
まず相手を好きになったら自分が同性愛者というのを伝えて、なおかつ相手も同性愛者でさらに自分の事を好きになってもらわないといけない。
世間体も含めてかなりハードルが高い気がする。
現代は昔と比べて環境は変わっているはずだけれどまだまだ偏見や誤解が多いと思う。
人は誰でも幸せになる権利がある。
どうか自分を偽らないで、世間に負けないで生きてほしい。
【猫】
彼氏と猫と暮らしている女性のお話。



自分も昔猫を飼っていたのだけれど、猫は本当に可愛い。
けっこう甘えてくるタイプの子で冬はよく一緒の布団で寝た。
明け方気が付くとこたつの中で寝ていて、ヒーターを付けると真っ先にヒーターの前を占拠していたのが思い出。
猫は個人主義のようでそうではない一面がある。
物語の女性の意見と真逆ですが。
【見知らぬ女】
あまり良くない家庭環境で育った女性のお話。



ちょっとファンタジー色が強くて合わなかった。
【片づけろ】
目に見える部屋の汚さとPC内のエロ動画の容量。
男と女の目につくところは違うというお話。



個人的には部屋の汚さとPC内の容量は別の件だと思うのだが。
まぁ共用のPCでエロ動画コレクションは駄目か。
【1900】
父親の失業をきっかけに1900年ごろの暮らしを家族総出で3か月間する事になったお話。
電気・ガス・水道はもちろん無い。
水は井戸から汲む。食事はまきで火を作る。洗濯はタライと板。明かりは石油ランプ。
生きていける気がしない…



1900年ごろってどんな暮らしだろう?ググってみた。
てゆーか1900年の変換に明治33年が出てくる。すげぇぇぇぇ。
意外にもエレベーター付きのビルや公衆電話ができた年代らしい。
近代化しとる…
田舎のばあちゃんちに昔泊まりに行ったときは、若干生活が古くなる経験をしたけれどもそれより圧倒的に過酷だ。
物語内でもそうだけれど、この時代の生き方は家族全員で生活している感がスゴイ。
父は仕事。母は家事。姉も嫁入り前の家事。弟は学校。
2割ほどは学校には行けなかったみたいだけれども。
なんてゆーか生きるのに家族全員が協力していく感じ。
今の時代よりもある意味幸せかもしれない。
令和元年は、家事が進化した分時間の節約がすごくできるようになった分、仕事に時間を奪われている気がする。
そもそも家事が進化したのは余暇を増やすためであって仕事を増やすためではない気がするのだが…
早くAIに仕事を奪ってもらいたい。
余暇が欲しいぜ。
【帰る】
東京に上京した女性が帰省するお話。



両親はいつまでも変わらないと思っているけれど実はそうではない。
たまに帰省すると両親の老け具合にビビる。
自分は実家がバスで20分の距離なのだけれど、滅多なことでは帰省しなくなっている。
もっとマメに帰省しないといかんなぁ。
近いし理由もないと帰省しないんだよな。
たまには帰省しよう。そう思った。
中の人のあとがき



戸田先生の作品は本当に人生について考えさせられるストーリーが多い。
特にタイトルからも分かる通り「女性」に向けた作品になっています。
もちろん女性だけではなく男性も楽しめます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が『WOMAN 新装版』に興味を持つきっかけになれば幸いです。
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