今日ご紹介する漫画は『音楽と漫画と人』
この記事では、『音楽と漫画と人』がなぜ短さの中でこれほど強く心に残るのか、その理由を構造とテーマの両面から整理する。
音楽や漫画という表現が、人生とどう結びつき、どうすれ違い、どう救いにも傷にもなり得るのかがわかる。
創作に関わる人だけでなく、何かを続けることに疲れた人にも刺さる理由が見えてくるはずである。
『音楽と漫画と人』ってどんな漫画？
『音楽と漫画と人』は、雑誌『音楽と人』に連載されていた2ページ完結の超短編を集めた作品集である。
登場するのは、音楽を作る人、漫画を描く人、そしてそれを取り巻く「普通の人」たちだ。
派手な事件や劇的な展開はほとんど描かれない。
代わりに、創作と生活のあいだで揺れる感情や、表現することへの迷い、続けることのしんどさが淡々と切り取られる。
1話2ページという極端に短い構成だからこそ、説明は削ぎ落とされ、感情の核心だけが残る。
音楽漫画でも、漫画家漫画でもあるが、本質的には「人の話」である。
作品情報
| 作品名 | 音楽と漫画と人 |
| 作者 | 戸田誠二 |
| 巻数 | 全1巻 |
| ジャンル | 短編集/日常/オムニバス/超ショートショート/人生/音楽/漫画 |
| 掲載誌 | 2012年3月に宙出版から発行 |
『音楽と漫画と人』の魅力3点
魅力① 2ページで「人生の断面」を成立させる構成力
本作最大の特徴は、1話わずか2ページという制約の中で、人生の一断面を成立させている点である。通常、物語は起承転結を必要とする。
しかし本作では、起も承も説明されないまま、いきなり「転」や「余韻」だけが提示される。
そのため読者は、描かれていない前後を自然と補完することになる。
なぜこの人物はこうなったのか、この一言の裏に何があるのかを考えさせられる。
これは説明不足ではなく、意図的な余白である。
2ページという短さは、人生がいつも途中で切り取られるものであるという事実とも重なる。
人は自分の物語を最初から最後まで俯瞰できない。
ある瞬間に立ち会うだけだ。
本作はその感覚を、形式そのもので再現している。
魅力② 創作を「夢」ではなく「生活」として描いている点
本作に登場する音楽家や漫画家は、成功者ではない場合が多い。
売れない、評価されない、続ける意味がわからなくなる。
そうした姿が美化されることも、逆に断罪されることもない。
創作は夢ではあるが、同時に生活を圧迫する現実でもある。
家賃、仕事、人間関係、年齢。そのすべてが創作に影を落とす。
本作は、その重なりを非常に現実的に描く。
だからこそ、創作をしていない読者にも届く。
音楽や漫画は、ここでは特別な才能の話ではない。
「好きなことを続ける」という行為そのものの象徴として描かれている。
続けることが正解とも、やめることが間違いとも言われない。
その曖昧さが、現実と同じ温度を持っている。
魅力③ 感情を説明しないことで生まれる共感の強度
本作では、登場人物の感情が言葉で説明されることはほとんどない。
悲しい、悔しい、嬉しいといった感情は、表情や一言、沈黙によって示されるだけである。
しかしその分、読者は自分の感情を重ねやすい。
明確な感情表現は、理解を助ける一方で、解釈を固定してしまう。
本作はそれを避け、読者側に感じさせることを選んでいる。
結果として、「わかる気がする」という曖昧だが強い共感が生まれる。
これは、人生に明確な答えがないという前提に立った作品だからこそ可能な表現である。
中の人の一言感想
漫画の旅人1話2ページの超ショートショート作品の集まり。
音楽らしく69(ロック)の作品が掲載されている。ロック以外の読み方は決してしないように。
感想も超ショートショートで行くぞ。
第一章
【友だち】
漫画の旅人ちょっと怖いお話。
下手したら危ないクスリをやっていると疑われるのでは。
【毎日がパーティー】
漫画の旅人陽キャパリピのお話。
寂しいと死ぬウサギみたい。
【中華屋にて】
漫画の旅人中の人の思い出の飯屋は、今は亡きビルディ。
ガストではない。
【漫画家の飼い方】
漫画の旅人売れっ子漫画家になるには宝くじが当たるより確率が低いとの事。
切ねぇ。
【昇天】
漫画の旅人好きなことをするのは気持ちいい。
【子守り唄】
漫画の旅人自分の好きな音楽のツールは胎児の時に聴いた音楽の影響かもしれない。
【100%】
漫画の旅人戸愚呂でもフリーザでもない。
【シメキリ】
漫画の旅人何が生きがいかは人それぞれ。
親にも口出しする権利はないね。
第二章
【’69】
漫画の旅人ロック。決して別の読み方をしてはいけない。
【雨ニモマケズ】
漫画の旅人親の理想通りには中々ならないよね。
【その声は私のもの】
漫画の旅人なんかいやらしい話。
ニヤッとしちゃう。
【問題】
漫画の旅人何もかも嫌になる時ってあるよね。
自分に合った発散方法を見つけよう。
【届け】
漫画の旅人死後人は涙が出ることがよくある。
知らなかった。
【穴】
漫画の旅人自分を特別だと思うのはやめたほうがいい。
気を付けよう。
【転】
漫画の旅人相談相手が終始同じ表情で不気味。
絶対裏切るキャラだよ…
【GIFT】
漫画の旅人テンテン君を思い出した。
好きな事と出来る事が違うのは人類最大の欠陥だと思う。
【魚】
漫画の旅人無いものねだり。
贅沢な悩み。
みんな同じか。
【おつきあい】
漫画の旅人中の人が生まれて初めて聞いた生の音楽、FAIRY FORE。あの迫力は今も覚えている。
【教えて】
漫画の旅人社畜のお話。
心を亡くすと書いて忙しいとはよく言ったもんだ。
第三章
【Solitude Standing】
漫画の旅人家庭環境って大事。
支えてくれる誰かに出会えるといいな。
【共演】
漫画の旅人幼馴染と仕事まで一緒になる。
中々ないことだと思う。
絆を大事にしてほしい。
【音楽のフトコロ】
漫画の旅人プロを目指して続ける理由、辞める理由は人それぞれ。
【魔王】
漫画の旅人教師として生徒へ生き方の手本を見せた。
一人でも影響を与えられるのはスゴイ。
【カオ】
漫画の旅人それだけ感情移入しているから人の心を動かせるんだな。
【黒のポケット】
漫画の旅人少しでも自分の好きな事に携わりたい。
【喝采】
漫画の旅人好きな事で生活をする。職種問わず尊敬します。
【恋人】
漫画の旅人世の中の著名人の裏には支える人がいる。
【情けないヤツ】
漫画の旅人人と比べて自分は恵まれている。
時と場合によってはこんな考え方も必要。
【コーヒー一杯】
漫画の旅人好きじゃなきゃできない仕事。
世の中の作家さんや発行に関わる方に感謝。
【セットリスト】
漫画の旅人自分の死をプロデュース。
余裕ある逝き方って幸せ。
【LIVE】
漫画の旅人自分の人生は常に自分が主人公。生きろ。
第四章
【ライブハウスへ】
漫画の旅人両親が見にくる学芸会を思い出した。なんか気恥ずかしい。
【生活1】
漫画の旅人休日こんな生活してるかも。ヤバい。
【ホームタウン】
漫画の旅人上京して成功した人ならではの感覚。
充実していないといつまでもアウェー感が拭えないんだろうな。
【Sad Song】
漫画の旅人哀しい歌って定期的に聞きたくなる。涙を流せ。
【セッション】
漫画の旅人自分の憧れの人が店に来たら感情がパニックになる。
【みんな一緒】
漫画の旅人先生は大人だと思ってたけれど実はそんな事ないよね。
【選択】
漫画の旅人1ページ目が『恐竜大紀行』みたい。
人生は常に選択。
【引き換えチケット】
漫画の旅人皆何かのために頑張って生きてる。
それが巡り巡って世界をつくっている。
【マリー】
漫画の旅人ペットは家族の一員。
ずっとずっと忘れない。
【生活2】
漫画の旅人平凡な毎日。
音楽の力は偉大だ。
第五章
【音楽の神様】
漫画の旅人生涯現役。
【命名】
漫画の旅人著名人の名前をもらうのって中々ギャンブルな気がする。
【ステキな周波数】
漫画の旅人世界は様々な音であふれている。
好きな音楽でシャットアウトしてもいいけど、たまには生活音を楽しむのも大事。
【遺志】
漫画の旅人自分がいなくなっても人に何かを遺せる事って素敵だ。
【上京1】
漫画の旅人東京出身頑張れ。
【正体】
漫画の旅人ほとんどの人は一生体感しないであろう行為。
知るという事はとても大事だ。
【お休み】
漫画の旅人ワーカホリック。
個人事業主の方にとっては良い事。
組織に居たら最悪な事。
【Deep Purple】
漫画の旅人モラウの旦那が真っ先に出てきた。
【不安】
漫画の旅人不安を取り除く特効薬は練習のみ。
【オルペウスの唄】
漫画の旅人爪が甘い。
西武の西口投手のようだ。
【展覧会にて】
漫画の旅人こういう関係性が羨ましい。
【思い出】
漫画の旅人学生時代に何かを一生懸命やった経験。
それが自分の芯になる事もある。
第六章
【スキマ】
漫画の旅人効率的な世の中になって失われそうなこともある。
ゆったりとした時間が嗜好品になってきている。
意識して取るようにしよう。
【定食屋にて】
漫画の旅人大人からすると自分達はいつまでも子供なんだなと。
【飛び降り自殺】
漫画の旅人人生に絶望すると視界に色が無くなるらしい。無職で無色。
まず生きたいモードに切り替えよう。
【二畳の宇宙】
漫画の旅人漫画を描けるってすごい事だ。
世の中に数々の感情を届けてくれる。素敵。
【リレー1】
漫画の旅人よくわからなかった。初めが肝心って事だろうか。
【世界】
漫画の旅人音楽の買い方に時代を感じる。
捨て曲のないアルバムを見つけたとき嬉しかったもん。
【ドッペルゲンガー】
漫画の旅人人は何だかんだ理由を付けて楽な方へ行きたがる。
耳が痛いぜ。
【上京2】
漫画の旅人人が何かを始めるきっかけって意外に大したことないもの。
一歩踏み出そうぜ。
【80点】
漫画の旅人プロとアマの違い。
100点を目指せるのはアマチュアの内だけ。深い。
【Big Band in Heaven】
漫画の旅人天国ってあるんだろうか。
天国行ってまで働きたくねぇぇぇぇ。
【アリとキリギリス】
漫画の旅人堀江貴文さんの著書『あり金は全部使え 貯めるバカほど貧しくなる』にもアリとキリギリスを例に自分の考えをまとめていた。
『あり金は全部使え 貯めるバカほど貧しくなる』101巻をブックウォーカーで試し読み
【世界征服】
漫画の旅人広く浅くより狭く深く。
【うたごころ】
漫画の旅人技術よりも感情の方が時に人の心を打つ。
【リレー2】
漫画の旅人人と人は繋がっている。
【リレー1】よりわかりやすかった。
【I am a Rock】
漫画の旅人グダグダ言わずやれ。成功者の行動。
中の人のあとがき
漫画の旅人「音楽家」と「漫画家」のクリエイターの人生をテーマに各キャラの人生を描いた短編集。戸田先生の原点ともいえる、超ショートショートで構成されています。
生きることに悩んでいる人、ちょっと疲れた人、そんな人にぜひ読んでもらいたい一冊です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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