今日ご紹介する漫画は『唄う骨』
この記事を読むことで、『唄う骨』が単なる残酷童話集ではなく、「人間の感情がどこで壊れ、どこで取り返しがつかなくなるのか」を描いた作品であることがわかる。
また、各エピソードに共通するテーマや、戸田誠二作品に通底する価値観についても整理できるはずである。
重いが、目を逸らす価値はない。そう言える理由を、本作の魅力から掘り下げていく。
『唄う骨』ってどんな漫画?
『唄う骨』は、戸田誠二による短編集であり、グリム童話や各国の昔話・寓話を下敷きにしながら、人間の欲望、嫉妬、依存、そして救われなさを静かに描き出す作品集である。
本作に収録されている物語は、単なる童話の翻案ではない。
結末は甘くなく、教訓も一義的ではなく、むしろ「人はなぜこうしてしまうのか」という問いを読者に残す構成になっている。
登場人物たちは特別な悪人ではない。
誰もが持ちうる感情――他者と比べてしまう心、愛されたいという欲求、失うことへの恐怖――が、ほんの少し歪んだ結果として、取り返しのつかない選択へと転がり落ちていく。
その過程を淡々と描くのが『唄う骨』である。
幻想的な設定や童話的モチーフを使いながら、語られているのは極めて現実的な人間の姿だ。
だからこそ、読後に残るのは「怖さ」よりも「納得」に近い感情である。
作品情報
| 作品名 | 唄う骨 |
| 作者 | 戸田誠二 |
| 巻数 | 全1巻 |
| ジャンル | 短編集/ファンタジー/童話/昔話 |
| 掲載誌 | 『まんがグリム童話』と『Hiミステリー』で2001年から2005年に掲載 2005年8月にぶんか社から発行 |
『唄う骨』の魅力3点
魅力① 童話という形式を使いながら「救済を拒否する構造」にある
『唄う骨』の最大の魅力は、童話・昔話という形式を借りながら、そこに本来期待される救済や教訓を意図的に排除している点にある。
一般的な童話は、残酷な展開があったとしても、最終的には因果応報や道徳的な結論へと回収される。
しかし本作では、その「回収」が行われない。
物語は、取り返しのつかない地点で静かに終わる。
たとえば「唄う骨」や「ネズの木」に代表される物語では、登場人物は決定的な選択を誤るが、それは突発的な狂気ではなく、日常の中で積み重なった感情の延長線上にある。
嫉妬、比較、愛されたいという欲求、承認されなかった記憶。
どれも誰の中にも存在する感情であり、だからこそ物語は読者にとって他人事にならない。
本作が恐ろしいのは、悪人が描かれていない点である。
登場人物たちは、環境や立場、感情に流されながら行動しているだけで、強い悪意を持っているわけではない。
それでも結果は悲劇に至る。
この構造が示しているのは、「人は善悪の判断以前に、壊れてしまうことがある」という事実である。
『唄う骨』は、教訓を与えるための童話ではない。
むしろ「教訓など存在しない現実」を、童話の形で可視化した作品である点に、この作品固有の魅力がある。
魅力② 善悪・被害者・加害者を断定しない視点の一貫性
『唄う骨』を通して一貫しているのは、登場人物や出来事に対して、作者が裁きを下さない姿勢である。
物語は淡々と進み、読者に「誰が悪かったのか」「何が間違いだったのか」を明確に提示しない。
むしろ、その問い自体が空虚であることを示しているように見える。
「くすねた銅貨」では、誰か一人が悪者であるとは言えない。
善意が裏目に出ることもあれば、悪意のない行動が結果的に誰かを追い詰めることもある。
そこにあるのは、歯車が噛み合わなくなった結果としての破綻であり、単純な因果関係ではない。
この視点は、「灰かぶり姫は誰だ?」のような童話再構築型の作品でも同様である。
幸福になる権利は誰にでもあるが、その幸福が他人との比較や奪取によって成立する場合、それは本当に幸福なのか。
作品はその問いを投げかけるだけで、答えを与えない。
『唄う骨』は読後にスッキリしない。だがそれは欠点ではない。
現実の人間関係や人生が、そもそも整理できないものだからである。
本作は、その不完全さを誤魔化さずに描いている。
善悪を断定しないという姿勢そのものが、『唄う骨』という作品の倫理観であり、読み手に強い余韻を残す理由でもある。
魅力③ 読後に「理解」ではなく「記憶」として残る物語性
『唄う骨』の物語は、読了直後に強いカタルシスを与えるタイプではない。
むしろ読み終えた直後は、何とも言えない違和感や後味の悪さが残る。
しかし時間が経つにつれて、特定の場面や言葉がふとした瞬間に思い出される。
この「後から残る感覚」こそが、本作の大きな魅力である。
それは物語が派手だからではない。
説明が少なく、感情を過剰に演出しないため、読者自身の経験や感情が自然と入り込む余白がある。
だからこそ、読者は無意識のうちに物語を自分の中で再構築してしまう。
「ネズの木」や「唄う骨」に描かれるのは、特別な人間ではない。
ごく普通の人間が、少しずつ歪み、引き返せない地点に到達してしまう過程である。
その構造が現実とあまりにも近いため、物語は理解ではなく記憶として残る。
『唄う骨』は、面白かったと軽く言える作品ではない。
だが、人生のどこかのタイミングで読み返したくなる本であり、そのとき初めて意味が変わる可能性を持っている。
娯楽としては重い。
しかし、人生を考える材料としては極めて誠実な作品である点に、『唄う骨』の決定的な魅力がある。
中の人の一言感想
この漫画集に収録されている作品は、実在の昔話をモチーフに再構成されたもの。
()内のタイトルは元になったお話。
【唄う骨】(Bder singende Knochen)
姉妹を残して、母は亡くなった。
最期に母が遺した言葉は「妹をお願いね」だった。
姉はその言葉を守るため、娼婦として働きながら妹を育てる。
しかしすぐに客がつかなくなり、仕事を続けることはできなくなったが、姉妹は慎ましくも無事に暮らしていた。
容姿に恵まれなかった姉とは対照的に、妹は成長し、美しい女性になった。
妹には恋人ができ、姉もまた、自分自身の幸せを考えるようになる。
しかし、ある日、妹から告げられた一つの事実が、姉の人生を決定的に変える。
その瞬間、姉は妹を殺してしまう。
漫画の旅人妹、自分、彼氏、誰も救われないとても悲しいお話。
【くすねた銅貨】(Der gestohlene Heller)
アンは子どもを産むことができない体である。
それでも、愛する夫の子どもであれば、たとえ継子であっても愛せるはずだと考え、結婚を選んだ。
しかし現実は思い描いた通りには進まない。
継子との関係は次第にぎくしゃくし、距離は縮まらないまま時だけが過ぎていく。
その歪みはやがて夫婦関係にも影を落とし、夫との関係も少しずつ崩れていくことになる。



誰が悪いというわけではないけれど、歯車が狂った結果最悪の事態になった。
心の傷は時が癒してくれる。
けれどいなくなった人のことは絶対に忘れないでほしい。
【ネズの木】(ねずの木の話)
幼馴染の女性二人の物語である。
一人は、幼い頃から何でも器用にこなす優等生のマーギット。
もう一人は、美しく愛らしく、周囲から自然と好かれる人気者のエリザベートである。
マーギットにとって、自分がエリザベートの「一番の親友」であることは誇りだった。
しかしある日、エリザベートに恋人ができたことで、その関係は少しずつ変化していく。
エリザベートは恋人を優先するようになり、マーギットに向けられる時間は減っていった。
やがて社会に出た二人の立場は逆転する。
マーギットは職場での功績を認められ、出世を果たす。
一方、エリザベートは職場で上司に叱責される立場に置かれる。
その光景を前に、マーギットは密かな優越感を抱く。
二人の関係はすでに修復できないほど歪んでいた。
エリザベートは結婚を機に寿退社し、マーギットもまた、それに続くように寿退社する。
結婚後、新居に越してきたマーギットだが、隣人はエリザベート。
エリザベートは子どもにも恵まれ、理想的な家庭を築いていた。
その姿は、思い描いていた人生を手に入れられなかったマーギットの焦燥感を強く刺激する。
マーギットの不安定な態度に、夫は次第に疲れ果て、ついには家を出ていく。
家庭も仕事も失ったマーギットは、理想の人生から完全に取り残されたと感じるようになる。
追い詰められ、心を壊したマーギットは、エリザベートの娘を殺害する。
その後、エリザベートは「娘が行方不明になったのは、家庭がうまくいっていなかったからだ」とマーギットに語る。
実はエリザベート自身もまた苦しみを抱え、マーギットの才能や強さに嫉妬していたのだ。
マーギットはそこで初めて、自分が何のために生きてきたのか分からなくなる。
耐えきれなくなったマーギットは、エリザベートに対し、自分が娘を殺した犯人であることを告白する。
処刑を目前にしたマーギットは、最後にこう語る。
「エリザベートと過ごした幼少期こそが、人生で一番楽しかった時間だった」と。
そうしてマーギットは処刑される。



悲しいお話。
幸せは人と比べる相対値にしては駄目という教訓。
自分が幸せならそれでいい。
絶対値で生きていこうと思った。
【アオカミ】(青ひげ)
サイコパスの男性のお話。
人を殺すことでしか自分を癒せない癖の持ち主。



誰でも幸せになる権利はあるけれど、人の幸せを奪ってまで幸せになっちゃいけない。
そう思った。
【灰かぶり姫は誰だ?】(灰かぶり)



唯一知っていた話。シンデレラ。
シンデレラとは違って姉や母はそこまで憎めない。
むしろ姉や母の方にスポットが当たっていて感情移入できるかもしれない。
中の人のあとがき



この作品を読んでいて思ったのが、容姿が良くない女性が高確率で不幸になっていること。
容姿以外にも優れたところはあり、それを活かして生きている描写もあるが全体的に悲しい結末になっている気がする…
でも男女関係なく容姿が良いってのは凄まじい才能だと思う。
容姿の良さが後天的に環境を良くして性格にも大きな影響を与えると思う。
話がずれてしまった…
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が『唄う骨』に興味を持つきっかけになれば幸いです。
作品に興味を持った方は、こちらから電子版を確認してみてください。





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