『大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】』が描いた「時間犯罪」と恐怖の正体

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今日ご紹介する漫画は『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生

・この記事を読むとわかること
『大長編ドラえもん のび太の日本誕生』は、「時間」を舞台装置ではなく脅威として描いた作品である。
本作では、神隠しを思わせる不安な現象や、歴史を改変する未来人の存在が物語の中心に据えられ、これまでの大長編とは異なる恐怖が提示される。
この記事では、時空乱流という設定がどのように恐怖を生み出しているのか、敵がドラえもんより未来の人間であることが何を意味するのか、そしてタイムパトロールの登場がシリーズにもたらした変化を、三つの観点から読み解いていく。

目次

『大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】』ってどんな漫画?

『のび太の日本誕生』は、大長編ドラえもんシリーズ第9作にあたる作品である。
舞台は原始時代の中国と日本だが、単なる過去冒険譚ではない。
本作が真正面から扱うのは、「時間」と「歴史」に手を加えることの危うさである。

物語は、現代に居場所を失ったのび太たちが過去へ向かうところから始まる。
しかし、そこに待っているのは理想郷ではなく、時空の乱れによって生まれた不安と恐怖だ。
神隠し、時間犯罪、未来人の介入といった要素が絡み合い、シリーズの中でも特にSF色とホラー性の強い一作となっている。

作品情報

作品名大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】
作者藤子・F・不二雄
巻数全1巻
ジャンルSF/原始時代/武田鉄矢/ウンバホ
掲載誌月刊コロコロコミック(1988年10月号から1989年3月号)
アニメ映画1989年3月11日
関連作品映画 新・のび太の日本誕生(リメイク作品/2016年3月5日)

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『大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】』の魅力3点

魅力① 時空乱流と神隠しを重ねた、恐怖を生む時間設定

本作の最大の特徴のひとつが、「時空乱流」という設定である。
これは単なる時間移動の事故ではない。人が突然消える、穴に吸い込まれる、戻ってこられないかもしれないという、不安定で説明のつかない現象として描かれる。

この描写は、日本に古くからある「神隠し」の感覚と強く結びついている。
理由が分からないまま人が消えることへの恐怖は、怪物や敵がはっきり見える恐怖とは質が違う。
何が起きているのか分からない、どこへ行ってしまったのかも分からない。
その曖昧さこそが、本作の不気味さを支えている。

また、穴に吸い込まれる場面の演出は、子ども向け作品としては異例の緊張感を持つ。
逃げ場がなく、抗うこともできない。
時間そのものが牙をむく構造は、単なる冒険のスリルではなく、根源的な恐怖を呼び起こす。

『日本誕生』は、時間移動を便利な道具としてではなく、制御を失えば人を飲み込む危険な現象として描いた。
その判断が、本作をシリーズ屈指の怖い大長編にしている。

魅力② 敵はドラえもんより未来の人間という、時間SFの反転構造

本作で立ちはだかる敵は、怪物でも原始人でもない。
ドラえもんより先の未来から来た、人間そのものである。
この設定は一見自然に思えるが、シリーズ全体を見渡すと非常に異質だ。

ドラえもんは未来の存在であり、通常は最先端の技術を持つ側に立つ。
しかし『日本誕生』では、その前提が崩される。ドラえもんよりもさらに未来の世界が存在し、そこから来た人間が歴史を利用し、搾取しようとする。

ここで描かれるのは、「未来=進歩=善」という単純な図式の否定である。
高度な技術を持っていても、それをどう使うかは別問題だ。
今作の未来人は知性と力を背景に、過去を道具として扱う。
その姿は、文明そのものへの不信感をはっきりと示している。

この構造によって、物語は単なる過去冒険ではなく、時間を支配しようとする人間の傲慢さを問うSFへと変わる。
敵が人間である以上、倒して終わりにはならない。
この不後味の悪さもまた、本作の重要な要素である。

魅力③ タイムパトロールの初登場が示す、時間犯罪という概念

『日本誕生』は、タイムパトロールという存在を初めて明確に提示した作品でもある。
彼らは時間移動を監視し、歴史改変を犯罪として取り締まる組織だ。

この設定が示すのは、時間にも秩序が必要だという考え方である。
過去を変えることは自由ではなく、責任を伴う行為であり、場合によっては犯罪になる。
その視点は、ドラえもん世界を一段階システム化した。

タイムパトロールの登場によって、時間移動は個人の冒険から社会的な問題へと引き上げられる。
これは後の大長編や短編にも大きな影響を与え、ドラえもん世界の基盤設定となっていく。

『日本誕生』は、恐怖や冒険だけでなく、時間を扱うことの倫理まで踏み込んだ作品である。
その意味で、本作はシリーズの転換点のひとつだと言える。

『のび太の日本誕生』は、漫画だけでなくアニメ映画としても再解釈されてきた作品である。
原作の構造を踏まえたうえで映像版を見比べると、時間移動や恐怖演出が、時代ごとにどのように描き直されてきたのかが見えてくる。

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中の人のあとがき

漫画の旅人

大長編の第九作目です。
今作では神隠しをモチーフに時空乱流の設定が作られた。
穴に吸い込まれるシーンがめちゃくちゃ怖い。
未だに覚えている幼少の記憶。
自分はこの映画からリアルタイムでドラえもん映画を見始めた。
ドラえもんの作中の神隠しのセリフも恐怖に拍車をかけた。
ツチダマが怖すぎる。
パラレル西遊記位から恐怖感を植え付けてくる作風になった気がする。

衣食住が人間の生活の必需品と悟るのび太。
ドラえもんの道具ありきだけれど、自由と独立への第一歩を踏み出すこの行動力は見習いたい。
7万年前の日本が中国大陸に繋がっていたことを教えてくれた作品。
ありがとう。藤子・F・不二雄先生。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が『大長編ドラえもん VOL.9【のび太の日本誕生】』に興味を持つきっかけになれば幸いです。

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