今回ご紹介する漫画は『大長編ドラえもん VOL.23【のび太とふしぎ風使い】』
この記事では、
『のび太とふしぎ風使い』がなぜ「異質な大長編」と言われるのか、
ひみつ道具が機能しない構造が何を意味しているのか、
そして
フー子という存在が物語全体で果たした思想的な役割
この三点を整理して解説する。
作品情報
| 作品名 | 大長編ドラえもん VOL.23 のび太とふしぎ風使い |
| 作者 | 原作/藤子・F・不二雄 まんが/岡田康則 映画シナリオ/岸間信明 |
| 巻数 | 全1巻 |
| ジャンル | SF/風/台風 |
| 掲載誌 | 月刊コロコロコミック(2002年9月号から2003年4月号) |
| アニメ映画 | 2003年3月8日 |
『大長編ドラえもん VOL.23【のび太とふしぎ風使い】』ってどんな漫画?
『のび太とふしぎ風使い』は、人間界に現れた台風の子供・フー子との出会いを軸に、力を持つ者が何を選び、誰がその責任を引き受けるのかを描いた大長編である。
本作では、味方だったキャラクターが敵に回り、ひみつ道具は奪われ、壊され、機能しない。
代わりに前面に出てくるのは、風の民が持つ力と、それをどう使うかという意思だ。
そして物語の終着点に置かれているのは、
誰かに命じられた犠牲ではなく、自分で選び取った行動としての「献身」である。
力は誰のものか、想いは誰が背負うのか
裏切りとして描かれるスネ夫、英雄として描かれるジャイアン
本作でまず際立つのは、キャラクター配置の歪さである。
スネ夫は体を操られる前から「悪意を持つ側」として描かれ、一方でジャイアンはスネ夫に恨みはらす存在として描かれる。
この構図は、従来の大長編ドラえもんとは明らかに異なる。
「スネ夫は臆病だが根は善良」「ジャイアンは乱暴だが情に厚い」
そうしたお約束を、本作は意図的に崩している。
特にスネ夫は、状況に流された結果ではなく、自分の利益と欲望を理解した上で行動する人物として描かれる。
途中からはウランダーに操られてしまうが、外見上はスネ夫なのでドラえもんパーティVSスネ夫の絵面が新鮮に映る。
対照的に、ジャイアンはウランダーに操られたスネ夫を普段のスネ夫と思い込み、スネ夫の秘密を暴くためだけに敵地に乗り込む。
まるで短編のキャラ設定のまま大長編が始まった感覚となる。
ひみつ道具が敗北した世界で、何が“力”として残ったのか
本作では久々に「ひみつ道具便利すぎる問題」が発生する。
だが今回は単なる制限ではない。
敵は、風を操る嵐族と、22世紀の考古学者。
ひみつ道具を使用したにもかかわらず、一度はドラえもんは敗北し、四次元ポケットは奪われ、どこでもドアも壊れた状態で見つかり、スペアポケットに取りに行くという逃げ道すら塞がれる。
一方、風の民は道具を使わず、風そのものを操る力を持っている。
長老は「風の便りの術」で村中に声を届け、能力はすでに生活の一部として存在している。
つまり本作では、道具による力と、存在に根ざした力の対比が明確に描かれる。
ポケットが戻っても状況が好転しないのは、問題が「装備」ではなく「意思」にあるからだ。
最終局面で勝敗を分けたのは、ひみつ道具の性能ではなく、フー子と風の民が下した決断だった。
フー子が選んだ答えと、のび太が何もできなかった意味
フー子は、のび太のことが大好きだ。
その感情に嘘はない。
だが本作で重要なのは、フー子の行動が「のび太のために命じられた犠牲」ではない点にある。
フー子は、誰かに命令されたわけでも、役割を押し付けられたわけでもない。
自分が何を守り、何を終わらせるのかを理解した上で、自分で選んでマフーガに向かう。
そのとき、のび太は何もできない。
止めることも、代わることもできない。
本作ののび太は、英雄ではなく、選択を尊重する側に立たされる。
だからこそ、この結末は重い。
泣ける場面ではあるが、それ以上に「選ばせてしまった」という余韻が残る。
短編『台風のフー子』では描かれなかった、主体としてのフー子。
それを最後まで貫いた点に、本作の思想的な強さがある。
なお『のび太とふしぎ風使い』は、漫画版だけでなくアニメ映画としても映像化されている。
風を操る描写や嵐族の表現は映像との相性が非常に良く、特にフー子の選択が迎える結末は、漫画とは異なる感情の伝わり方を見せてくれる。
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短編『台風のフー子』と大長編『のび太とふしぎ風使い』のフー子は何が違うのか
短編『台風のフー子』と、大長編『のび太とふしぎ風使い』は、同じ「フー子」という存在を扱いながら、描いている主題が明確に異なる。
結論から言うと、
短編は「自然の脅威からのび太を守るフー子」
大長編は「人間の悪意からのび太を守るフー子」を描いている。
短編『台風のフー子』は、自然の脅威からのび太を守る物語
短編版でフー子が象徴しているのは、人間の力ではどうにもならない「自然」そのものだ。
台風は意思を持たない。
善でも悪でもなく、ただそこに存在し、人間に被害を与える可能性を持つ。
フー子はその自然の力を持つ存在でありながら、のび太を守るために力を使う。
ここで描かれているのは、
・自然は恐ろしい
・しかし自然の中にも優しさはある
・人間はそれを完全には制御できない
という、ごく普遍的な構図だ。
短編のフー子は、自然の代理人として描かれている。
だからフー子の選択は、どこか運命的で、抗いがたい。
別れが悲しいのは、「自然とは共に生きられない」という現実を突きつけられるからだ。
大長編『のび太とふしぎ風使い』のフー子は、人間の悪意からのび太を守る物語
一方、大長編でフー子が立ち向かうのは、自然ではない。
敵は、人間の欲望、恐怖、支配欲、そして悪意である。
嵐族、未来人、マフーガ。
それらはすべて、人間が何かを「利用しよう」とした結果として描かれている。
この世界では、風の力は本来、脅威ではない。
脅威に変えているのは人間側だ。
だからフー子の行動は、自然の摂理ではなく、人間の行為に対する明確な応答になる。
彼女は理解した上で選ぶ。
・誰が何をしようとしているのか
・放置すれば何が起きるのか
・自分が前に出れば終わること
そして、のび太を守るために動く。
ここで描かれるフー子は、自然の象徴ではなく、人間社会の歪みを引き受ける存在だ。
なぜ大長編の方が後味が重いのか
短編は、自然の脅威という「避けられないもの」に対する物語だった。
しかし大長編は、人間が作り出した脅威に対する物語である。
だから問いが残る。
・本当にフー子が犠牲になる必要があったのか
・人間側が立ち止まる選択はなかったのか
・守られた側は何を学んだのか
この問いに、明確な答えは示されない。
だがそれこそが、大長編『のび太とふしぎ風使い』が短編よりも一段踏み込んだ作品である理由だ。
同じキャラクターで、別の問いを描いた二作
短編『台風のフー子』は、自然と人間の距離を描いた物語。
大長編『ふしぎ風使い』は、人間同士の問題に、自然の存在がどう巻き込まれるのかを描いた物語。
同じフー子でも、守っているものが違う。
だから二作は、どちらかが上位互換ではない。
問いの向きが違うだけだ。
この違いに気づくと、『のび太とふしぎ風使い』がシリーズ後半に描かれた理由も見えてくる。
大長編で描かれたフー子の選択を、より立体的に理解したい場合は、原点となった短編『台風のフー子』もあわせて読んでおくとよい。
短編では、フー子は「人間の悪意」ではなく、「自然の脅威」という別の立場からのび太を守っている。
同じキャラクターが、何を背負い、何を選ばされているのか。
その違いは、短編と大長編を並べて初めてはっきりと見えてくる。
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中の人のあとがき
漫画の旅人大長編第二十三作目です。
スネ夫が敵になったり、ジャイアンがヒーローになったり、今までの大長編と一味違うストーリー展開。
最初から最後までスネ夫の悪感がすごい。
のび太の事が大好きで、のび太のためにマフーガに特攻するフー子。
めっちゃ泣ける…
『のび太とロボット王国』に続き絶対に読んでほしい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が『大長編ドラえもん VOL.23【のび太とふしぎ風使い】』に興味を持つきっかけになれば幸いです。
作品に興味を持った方は、こちらから電子版を確認してみてください。







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