今日ご紹介する漫画は『三丁目の夕日 夕焼けの詩』
昭和の下町・三丁目を舞台に、人々の何気ない日常と時代の移り変わりを描いた作品だ。
高度経済成長期の日本を背景に、家族、仕事、ご近所付き合いといった生活の断片が淡々と積み重ねられていく。
大きな事件は起きないが、当時の価値観や空気感が丁寧に描かれており、今読むことで時代そのものを追体験できる。
実写映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で知られているが、原作漫画はより生活に密着した視点で物語が進む。
本作は現在も完結しておらず、刊行が続いているため、巻を重ねるごとに時代と物語が積み上がっていくのも特徴だ。
この記事では、その中から【第12巻】に収録されたエピソードを解説します。
【三丁目の夕日 夕焼けの詩】ってどんな漫画?
作品情報
| 作品名 | 三丁目の夕日 夕焼けの詩 |
| 作者 | 西岸良平 |
| 巻数 | 既刊71巻 |
| ジャンル | 日常/歴史/昭和 |
| 掲載誌 | ビッグコミックオリジナル(1974年 – 現在) |
| アニメ | 1990年10月12日 から 1991年3月22日 |
| 実写映画 | 2005年/2007年/2012年 |
【三丁目の夕日 夕焼けの詩】各話レビュー
12巻1話【雪の降る町を…】
新聞社に勤める上野のぼると後輩の石川小百合のエピソード。
上野の仕事中、政治部の篠山から「相談事がある」とランチの誘いがある。
相談とは上野の後輩の石川小百合と交際をしたいので口を利いてくれということだった。
快く引き受ける上野。
だが上野には「人の顔をよく見ない」という悪い癖があり、篠山がメガネからコンタクトに変えたことも今日知ったのだった。
そんな上野の石川の第一印象は、「チビ・ガリ・ブス」という散々なものだった。
しかし上野のもとには、スポーツ政治部の立木も石川に結婚を申し込みたいと相談がある。
篠山と立木の話をしようと石川に声をかける上野だが…
漫画の旅人「人の顔をよく見ない」
すごくよくわかる。あんまりジロジロ見るのも悪いかなと思って未だにあまり目を見ないで話してしまう。なので人の顔を覚えるのが苦手だ。
12巻2話【おばあちゃんの火鉢】
おばあちゃんの世話をする吉男のエピソード。
吉男の両親は豆腐屋を営んでおり、足が不自由なおばあちゃんの世話をするのは吉男の役目だった。
だが吉男はおばあちゃんの世話をするのは苦ではなく、おかきを作ってもらったりお小遣いをもらったりと楽しく過ごしていた。
そんなある日、学校が終わっておばあちゃんの世話をしようとした吉男だが、近所で映画の撮影があって見に行ってしまう。
すっかり遅くなって家に帰ると、タクマ先生のスクーターが家の前に停車しており…



毎日お世話をしていたのに、お世話をしなかった日に限ってこういうことが起きてしまう。
12巻3話【サボテンの花】
サボテンを育てるのが趣味の角田仙平のエピソード。
仙平は自宅の庭に飼育室を作るほどサボテンにのめり込んでいる。
そのせいか会社では出世コースから外れて、家では奥さんや子供に責められてばかりで肩身が狭い。
そんな仙平の育てたサボテンが品評会で金賞を取る。
大喜びする仙平だが、妻は全くの無関心。
そんなある日、息子夫婦が仙平夫妻と同居するために、家をリフォームすることになる。
そして仙平のサボテンの飼育室が破棄されることになり、育てたサボテンを業者に売る仙平。
仙平の育てたサボテンは高額で売れて、家のリフォーム費用を賄ってしまい奥さんは驚き見直した。
今でも二階の物干しの隅でサボテンを育てる仙平。
息子の嫁は植物が好きで仙平の良き理解者となったのであった。



人生は好きなこと、没頭できることがあると幸せ。
そして他人の趣味は根本的には理解できないものと思っている。
他人の好きなものにケチを付けるくらいなら、没頭できることを見つけてほしい。
ただし他人の好きなものにケチを付けるという趣味以外で。
12巻4話【エイプリル・フール】
同棲する三浦百和と山口友恵のエピソード。
今日はエイプリルフール。
遅刻しそうになって慌てる百和だが、友恵は家中の時計を一時間早めていた。
友恵のエイプリルフールに見事引っかかる百和。
だが百和の嘘には全然引っかからない友恵。
そこで百和は会社から帰宅するまでに、友恵にエイプリルフールを仕掛けることを宣言するが…



日頃、嘘のありふれている世界。
逆に年に一度真実しか言えない日を作ってもらいたい。
どれだけ社会が混乱するのだろうか。
12巻5話【春のあらし】
六さんと妹のさくらのエピソード。
六さんの妹のさくらが集団就職で上京する。
そのため六さんは住み込みで働いていた鈴木オートを出て、妹のさくらと二人暮らしを始める。
六さんが家を出ることに悲しむ一平母と一平だが、六さんの新居は鈴木オートのすぐ近くだった。
新しい生活が始まった二人だが…



【夕焼けの詩】は時間が進まないサザエさん時空かと思いきや、物語内で少しづつ時は進んでいるようだ。
12巻6話【みんな夢の中】
鈴木一平のエピソード。
六さんが居なくなったので、六さんが使っていた部屋をもらった一平。
机や本棚を用意してもらって喜ぶ一平だったが、その晩から一人で寝ることになり恐怖で睡眠不足になる。
そして夢にはオバケが現れるが…



珍しくオチがなくストーリー性の弱いエピソード。
12巻7話【薄井文房具店】
三丁目の文房具店で働く、薄井信夫のエピソード。
愛想がよく丁寧な接客で人気の薄井文房具店。
一平も薄井文房具店でエナメル線を購入して、モールス信号機を自作する。
そんなある日、モールス信号を発見した一平は、暗号を解読する。
翌日、暗号の場所に向かった一平。
暗号の場所には薄井文房具店の信夫が現れて…



モールス信号で恋人とやり取りをする。
今後こういう時代は来ないと思う。
てゆーか当時でも居ないような気もするが。
12巻8話【赤いハイヒール】
六さんの妹・さくらのエピソード。
慣れない仕事で疲労が溜まっているさくら。
昼食を食べている所に松岡慶子が現れてコロッケを分けてくれる。
慶子はさくらのことを良く可愛がってくれて美人。
慶子は親会社のエリートサラリーマンと付き合っている。
そんな大人っぽくて美人の慶子に憧れるさくらだが…



社会人になって最初の先輩というのは一生覚えているくらい影響力がある。
12巻9話【カエルの唄】
孤児院で暮らすアキラとマリアのエピソード。
アキラとマリアは非常に仲が良く、本当の兄妹のように暮らしていた。
そんなある日、マリアのもとに実の母親が現れてマリアを連れて行ってしまう。
泣きわめくマリアと涙を流すアキラ。
二人は二度と出会うことはなかった。



マリアの母もたまには孤児院に来ればいいのに。
でも母親からするとマリアを捨てた罪悪感があるから来れないのかもしれない。
12巻10話【遠い雷】
同じ高校の野沢と春美の恋のエピソード。
野沢と春美は放送部で、親も公認のカップル。
遊んだり勉強したりととても充実した時間を過ごす二人。
そんなある日、野沢は足を怪我して破傷風にかかり亡くなってしまう。
絶望した春美は後を追おうと線路に向かうが…



大好きな人が居なくなってしまう。
非常に悲しいことだと思うが、後を追っても大好きな人が戻ってくるわけでもない。
残された人は亡くなった人のために全力で生きるのが義務だと思う。
もちろん義務感で生きるのではなく充実した幸せな人生を歩むべき。
12巻11話【ナイターの季節】
マモルと不二子のエピソード。
またマモルと喧嘩をした不二子。
今度の原因はマモルが野球中継に夢中で、贔屓のチームが負けると機嫌が悪くなるためだ。
それを聞いた不二子の母は、一つくらい気晴らしは必要だし、自分も野球を好きになれば解決するのではとアドバイスする。
そんな野球好きのマモルは、取引先の社長と野球を観戦しに行く。
だがマモルと取引先の社長は贔屓のチームが違って…



取引先の社長の「ビジネスと個人的趣味は切り離すことにしている」
当たり前といえば当たり前だが、こんな当たり前のことが出来ないのがたくさんいるんだろうなと思う。
12巻12話【避暑地の出来事】
タケオ一家のエピソード。
タケオは駅前で旅行のビラをもらい、キミ子とミヨ子と一緒に旅行に行くことにする。
格安料金で集合場所が夕日台の駅だったので、三丁目の住人も旅行に参加する。
宿はとてもボロいが、食事はとても美味しくて楽しく過ごすタケオ一家だった。



夏は年に一度しか来ない。
てゆーかどの季節も年に一度しか来ない。
自分は夏をあと何回過ごせるのか…
12巻13話【夏の星座】
「天文好きのおじさん」関谷のエピソード。
関谷は自宅の屋根の上に天文台を作って、毎晩星を観察していた。
そんなある日、星図表にも載っていない星を発見した関谷。
慌てて東京天文台に電話をして確認したところ、関谷は新彗星の発見者となった。
新彗星には孫のトモコの名前をつけた。
そして三丁目では空前の天文ブームが訪れるのであった。



星に自分の名前がつく。おそらく殆どの人間がつけられずに人生を終えていく。
だけど地球も太陽も月も別の銀河では別の名前がついているかと思うとロマンを感じる。
12巻14話【昆虫採集】
昆虫採集をする一平のエピソード。
トノサマバッタを追いかけて人の家の庭に入る一平。
一平はその家の子供・秀ちゃんと仲良くなって、昆虫の標本を見せてもらったり昆虫採集のコツを教えてもらう。
だが秀ちゃんは体が弱く、手術をしないと中学生前に亡くなってしまうという。
そして手術を受けに入院するというので、一平に虫取り網をプレゼントする。
秀ちゃんの虫取り網はとても柔らかくて、蝶を捕らえても少しも羽を傷めなかった。
しかし秀ちゃんは病院に行ったきり帰ってこないのであった。



自分が子供の頃にはすでに昆虫採集という文化が無かったように思う。
作品に興味を持った方は、こちらから電子版を確認してみてください。
すでにAmazonを利用している方は、Kindleですぐに読むこともできます。
なお『ALWAYS 三丁目の夕日』は、実写映画として映像化されている。
原作で描かれてきた昭和三十年代の暮らしや人と人との距離感が、実写では街並みや生活音を通して立体的に再現されており、「物語」よりも先に「時代の空気」が伝わってくる構成になっている。
漫画で味わう日常の積み重ねと、映画で一気に体感する昭和の時間。その違いを意識して見比べるのも一つの楽しみ方だ。
→ 実写映画版『ALWAYS 三丁目の夕日』
中の人のあとがき



夏の別れが多く描かれた12巻。
春夏秋冬。どの季節も季節の終わりは切ないけれど、個人的には夏の終わりが一番切ない。
長い夏休みの終わり。半袖から長袖へ。年末まで長期連休が無い。
原因はこんなところだろうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が『三丁目の夕日 夕焼けの詩』に興味を持つきっかけになれば幸いです。
『三丁目の夕日 映画化特別編』
『三丁目の夕日』の実写映画版公開記念作品。映画の原案になった12編を収録。
『ALWAYS 三丁目の夕日’64』
シリーズ初の3Dで公開する映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のノベライズ版。
『ALWAYS 三丁目の夕日』
2005年に公開された実写映画第1作目。
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
2007年に公開された実写映画第2作目。
『ALWAYS 三丁目の夕日’64』
2011年に公開された実写映画第3作目。
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