『ミッドナイトブルー』評価と感想｜夜に残る感情を描いた短編集

今回ご紹介する漫画は『ミッドナイトブルー』

読み終わった直後よりも、夜にふと思い出してしまう漫画がある。

『ミッドナイトブルー』は、恋愛や人生の出来事を「分かりやすい結論」で終わらせない短編集だ。
整形、年齢差、死、未練、すれ違い。
どの物語も、正解も救いも提示しないまま、感情だけを静かに残していく。

この記事では、『ミッドナイトブルー』の各話レビューを通して、なぜこの作品がスッキリしないのに記憶に残るのか、そして大人になってから効いてくる理由を整理していく。

『ミッドナイトブルー』ってどんな漫画？

『ミッドナイトブルー』は、「恋愛」を軸にしながらも、日常やファンタジーの要素を交えた一話完結の短編集である。

登場人物たちは、誰かを好きになり、すれ違い、選択を誤り、あるいは何も選べないまま時間だけが過ぎていく。
そこに大きな事件や劇的な逆転はない。
描かれるのは、自分の力ではどうにもならなかった瞬間だ。

絵柄やコマ割りは読みやすい一方で、人物の描き分けは最小限に抑えられている。
そのため読者は、特定のキャラクターではなく「状況」や「感情」に意識を向けることになる。

この作品は、読後に気持ちよく終わるタイプの漫画ではない。
むしろ、
「もし自分だったらどうしただろう」
「同じことを過去に経験した気がする」
そんな感覚だけが、静かに残る。

だからこそ『ミッドナイトブルー』は、一気読みよりも、夜に一話だけ読み返したくなる短編集なのである。

作品名	ミッドナイトブルー
作者	須藤佑実
巻数	全1巻
ジャンル	恋愛/日常/ファンタジー
出版社	祥伝社
発売日	2016年11月8日

こんな人に読んでほしい

・切ない恋愛ストーリーが好きな人
・変わった恋愛ストーリーが好きな人
・ファンタジーに抵抗がない人

気になった方は、まず試し読みしてみてください👇

『ミッドナイトブルー』の各話あらすじ＆感想

箱の中の思い出

高校教師・石井は、朝目覚めると見知らぬ若い女性と同じ部屋にいた。
前夜の合コン相手だと思っていたが、学校で同僚から「一緒に歩いていた」と言われた女性は合コンの参加者ではなかった。

合コン会場の居酒屋で再会した女性は、かつて石井が担任を務めた生徒・岡野史織だった。
岡野は整形によって外見が大きく変わっており、石井は顔ではなく名字や声から彼女だと気づく。

岡野は過去のいじめ、整形後の変化、そして石井への想いを語る。
石井はその気持ちを受け止めつつも、教師として、また大人として距離を保つ選択をする。
学校という場所を「箱」、教師を「中に入ったビー玉」に例え、思い出としてしまい込む話。

夢にも見たい

女子高生・小林千香は、毎週テレビに出演している男性アナウンサー・本田に強い憧れを抱いている。
本田が番組を卒業すると知り、千香は深く落ち込む。

ある夜、千香は夢の中で本田と出会うが、言葉を交わす前に目が覚めてしまう。
その後、本田は番組卒業の挨拶で「夢の話」を語り、夢の中で千香と似た女性と出会ったことを語る。

千香と本田は、互いに現実では接点を持たないまま、夢という形でのみつながっていたことが示される。

今夜会う人

バーに立ち寄った男性・満彦は、女性店員の顔に見覚えを覚える。
それは、大学時代に父の帰省に付き添って訪れた田舎町で出会った女性・シマに似ていた。

当時、満彦は暇を持て余す中でシマと親しくなるが、彼女が既婚者であること、そして正体が曖昧な存在であることを知る。
夜に会ったシマは人間ではない姿を見せ、満彦の前から去る。

その夜、満彦の祖母は亡くなる。
後日、写真を通して、シマの正体が祖母の過去と深く関係していたことが示される。

花が咲く日

植物研究者の南耕一は、海外調査へ向かう直前、近所の女性・芳妃から告白を受ける。
その場面を弟の英二が目撃していた。

耕一は行方不明となり、8年後、芳妃は植物園で働いている。
英二は芳妃への想いを抱え、植物を育てながら告白の機会を待つ。

しかし耕一が突然帰国し、芳妃に改めて告白する。
芳妃は耕一を選び、英二は想いを胸に抱いたまま日常へ戻る。

白い糸

大雪で帰宅できなくなった大学生・渡は、偶然再会した先輩・沙子の家に泊まることになる。
二人は大学時代の思い出を語り合い、かつての恋愛感情が浮かび上がる。

沙子は現在の自分が、過去の自信に満ちた自分とは違うことを語る。
渡は沙子を探し出し、自分の想いを行動で示す。

二人は完全な解決に至るわけではないが、過去と現在を受け入れながら同じ時間を過ごす。

ある夫婦の記録

お見合いで結婚した香澄と龍司。
龍司は「香澄が美しすぎて触れられない」という理由で、夫婦関係を持てない。

香澄は孤独を埋めるため浮気をし、龍司はそれを黙認する。
二人は会話を続けながらも、距離を保った関係を続ける。

最終的に、二人は喫茶店で定期的に会う関係を選び、それぞれの形で夫婦関係を継続する。

ミッドナイトブルー

高校時代、天文部の4人は火星の大接近をきっかけに将来の再会を約束する。
しかし直後、みのるが事故で亡くなる。

数年後、再会した3人の前に、みのるの幽霊が現れる。
幽霊のみのるは成仏せず、仲間たちの人生の節目を見守り続ける。

時間が止まった者と進み続ける者の違いが描かれ、
やがて、みのるが「普段いる場所」と、蓮見の選択が示されるところで物語は終わる。

『ミッドナイトブルー』はなぜスッキリしないのか｜構造としての未解決

この作品が読み終わったあとに残すのは、カタルシスではない。
むしろ、感情の置き場を失った状態である。

理由は明確だ。
どの話にも「正解」が用意されていない。

・想いはあった
・選択肢もあった
・だが選ばなかった、選べなかった

この三点が揃ったとき、人は納得できない感情を抱える。
『ミッドナイトブルー』は、その未処理の感情をあえて回収しない。

また、登場人物の顔や個性が記号的であることも重要だ。
読者はキャラクターを消費するのではなく、自分の過去や感情を重ねる構造になっている。

スッキリしないのではなく、スッキリさせないように作られている。
それが本作の設計だ。

『ミッドナイトブルー』が大人になってから効いてくる理由

若い頃に読むと、よく分からない話が多い。
感情移入できるキャラクターも少ない。

だが、年齢を重ねると評価が変わる。

・選ばなかった道
・何も言えなかった瞬間
・終わったはずなのに残り続ける感情

そうした記憶が増えるほど、この短編集は現実味を帯びてくる。

『ミッドナイトブルー』は、「人生はちゃんと終わらない」という事実を、静かに肯定する作品だ。

救われない話が多い。
それでも、描かれる感情はすべて否定されない。
だからこそ、夜にふと思い出してしまう。

作品に興味を持った方は、こちらから電子版を確認してみてください。

すでにAmazonを利用している方は、Kindleですぐに読むこともできます。

中の人のあとがき

各ストアで電子書籍がお得に読めるクーポン配布中！

以下の電子書籍ストアの初回限定特典で漫画がお得に読めます。
※ただし電子書籍ストアは時期によって割引やキャンペーンが変わるため、「今一番お得なサービス」を選んで読むのがおすすめです！

▶DMMブックス
（初回購入限定70％OFFクーポンがお得！）
▶U-NEXT＜ユーネクスト＞
（無料トライアルで600円分のポイントもらえる！）
▶BOOK☆WALKER
（初回購入限定！購入金額の50％コイン還元！）
▶まんが王国
（毎日最大ポイント50%還元！）
▶ブックライブ
(新規会員限定70％OFFクーポンがお得！)
▶コミック.jp 1000コース
（お試し期間中に1200円分のポイントもらえる！）
▶Amebaマンガ
（全マンガ100冊50%ポイント還元！）

※クーポン内容等は予告なく変更・終了する場合がございます。最新の情報は各公式サイトでご確認をお願いいたします。

📖 まだ電子書籍サービスを決めていない方はこちらの記事をどうぞ。
👉【電子書籍の購入はどこがいい？おすすめ電子書籍サービス6選！】